9月30日(金)から10月2日(日)まで、朱鷺メッセ新潟コンベンションセンターで開催された日本スポーツ心理学会第49回大会に参加いたしましたのでご報告いたします。
今回の学会大会には、スポーツ心理学研究室に関係する教職員10名、一般研究員4名、大学院生3名が参加いたしました。
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9月30日(金)
初日は、スポーツメンタルトレーニング指導士全国研修会と自主シンポジウムが行われました。
研修会セッション1は、「音楽家の心理相談」というテーマのもと行われました。
スポーツメンタルトレーニングの対象であるアスリートと当セッションの音楽家は一見相容れないイメージを持ちますが、「ひとつのことを極めている」「ほかのプレイヤーと比較される」「自身のやりたいことを追求したいが、周囲の評価も考慮しなければならない」など、フィールドは違えど共通点が多いと感じました。
また、心理臨床において、『クライアントの「変容が起こった瞬間」にフォーカスしがちであるが、重要なのは「変容を準備する混沌(スランプ)、地道な耕し(地道なやり取り)」と「保障する器(カウンセリングの場、カウンセラーの器、将来的にはクライアントの器)」である』というお話が大変印象に残りました。
過冷却水の例えでもありましたが、「衝撃を与えて氷に変化する瞬間」ではなく、「どのようにして過冷却水ができたのか」にフォーカスを当てていきたいと思います。
セッション2では、事例検討会が行われました。
特にカウンセラーが使う「ことば」に関する議論が活発になされていたように思います。
事例を提供された先生は「しんどいね」ということばを頻繁に用いられていました。
フロアからの意見としては、『クライアントの体験を追体験したうえでの「共感」から出たことばであれば問題ないが、そうでない場合は危険性がある』ということでした。
また、クライアントと対峙するたびに「イライラ」していたという話がありましたが、これは
『「カウンセラーがクライアントをコントロールしようとしているが、思うように動いてくれない」からイライラするのであり、クライアント中心に進められていなかったのでは?まずは「なぜ自分はイライラしているのか」を自分で理解すべき』という意見が出ていました。
私も「共感」の意味を再確認し、自己とも対話しながらカウンセリングを進めていきたいと思います。
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10月1日(土)
2日目は、口頭発表とシンポジウムが行われました。
口頭発表は興味深い演題ばかりで、研究室メンバーは自身の興味に基づいて聴きに行っていました。
私が聴きに行った発表の中では、大学サッカー競技者を対象に認知行動療法を実施し、審判員への抗議減少効果を検討した研究が印象深かったです。
大会企画シンポジウムは、「ランナー永田務選手の体験を聴く―スポーツ心理学からの3つのアプローチ―」というテーマで行われました。
パラアスリートである永田選手の体験について、山本先生は運動学習、鈴木先生は心理臨床、阿江先生は社会心理と各先生方の専門を絡めた議論がなされていたように思います。
学会企画シンポジウムは、「隠匿情報検査から学ぶ『うそ・だまし』の科学―スポーツ場面への応用と課題―」というテーマで行われました。
実際に警察現場でうそ・だましに関する研究を行っていた先生のお話では、ポリグラフを用いて特定の質問を投げかけたときの生理的反応からうそ・だましを推定するというものでした。
また、競技スポーツでのうそ・だまし、つまりフェイントについて二人の先生から話がありました。
卓球と剣道の現場のお話でしたが、サービスの回転偽装やイベントのフェイント、タイミングのフェイントなど大変興味深く拝聴しました。
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10月2日(日)
3日目は、ポスター発表が行われました。
以下、研究発表の題目となります。(★は研究代表者です。)
★高井秀明・岩崎宏次・戸松陽平
「簡易脳波計による注意集中を高めるプログラムの検討」
★坂部崇政・高井秀明
「空手のフェイントにおける注意の捕捉―先行手がかり課題による検討―」
★大久保瞳・高井秀明
「タイムプレッシャーの強度と反応時間および正答率との関係―タスクスイッチング課題からの検討―」
★飯田麻紗子・高井秀明
「大学生アスリートのフォーカシング的態度に関する特徴」
★相川聖・高井秀明
「日本語版Coping Inventory for Competitive Sportsの作成」
★堀彩夏・高井秀明
「アスリートにおける身体への意識が反芻および省察に及ぼす影響―対処方略を媒介変数とした検討―」
★浦佑大・高井秀明
「スポーツ版実行機能質問紙(Executive Functions Questionnaire for Sports: Sports-EFQ)の信頼性および妥当性の再検討」
★戸松陽平・高井秀明
「エフォートフル・コントロール特性が思考抑制による逆説的効果に及ぼす影響―アーチェリー選手を対象として―」
★折茂紗英・高井秀明
「日本語版スポーツコミットメント尺度2の作成」
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また、少しではありますが、新潟のおいしいお米と海の幸をいただきました。
学会大会3日間を通して、様々な学びを得られました。特に自身のサポートや研究を見つめなおす良い機会となりました。
今回得られた学びを活かし、サポート・研究活動にまい進していきたいと思います。
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